【技術書評】CAREER SKILLS ソフトウェア開発者の完全キャリアガイド

 毎週、技術書を読んで、ざっくり紹介します。今日は、ジョン・ソンメズ著『CAREER SKILLS ソフトウェア開発者の完全キャリアガイド』。

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本書の目次

第1部 ソフトウェア開発者になる方法
第2部 就職する方法
第3部 ソフトウェア開発の必須知識
第4部 ソフトウェア開発者の仕事
第5部 キャリアの伸ばし方
解説 by まつもとゆきひろ(Matz)

 はじめに
 第0章 この本は誰のためのものか
 第1章 この本の使い方
第1部 ソフトウェア開発者になる方法
 第2章 スタートの切り方
 第3章 身につけないといけない技術スキル
 第4章 技術スキルの身につけ方
 第5章 どのプログラミング言語を学ぶべきか
 第6章 最初のプログラミング言語の学び方
 第7章 大学の効用
 第8章 コーディングブートキャンプ
 第9章 独学
第2部 就職する方法
 第10章 インターンシップ
 第11章 職歴なしで就職する方法
 第12章 就職先の見つけ方
 第13章 履歴書を作る
 第14章 面接
 第15章 給料と交渉
 第16章 会社の辞め方
 第17章 キャリア半ばでの転身
 第18章 品質保証など関連技術職からソフトウェア開発への転身
 第19章 コントラクターか社員か
 第20章 転職業界の仕組み
第3部 ソフトウェア開発の必須知識
 第21章 プログラミング言語の概要
 第22章 ウェブ開発とは何か
 第23章 モバイル開発
 第24章 バックエンド開発
 第25章 ゲームプログラマーのキャリア
 第26章 データベース管理者とDevOps
 第27章 プログラミング言語の概要
 第28章 テストと品質保証の基礎
 第29章 テスト駆動開発ユニットテスト
 第30章 ソースコントロール
 第31章 継続的インテグレーション
 第32章 デバッグ
 第33章 コードのメンテナンス
 第34章 職務と肩書
 第35章 仕事の種類
第4部 ソフトウェア開発者の仕事
 第36章 同僚との付き合い方
 第37章 上司との付き合い方
 第38章 品質保証との付き合い方
 第39章 ワークライフバランス
 第40章 チームでの仕事
 第41章 考えの売り込み方
 第42章 ドレスコード
 第43章 人事考課で最高評価を獲得する
 第44章 差別、偏見への対処法
 第45章 リーダーという立場
 第46章 昇給、昇進、昇格の獲得
 第47章 IT分野の女性
第5部 キャリアの伸ばし方
 第48章 社会的な評価を築く
 第49章 人脈とグループ
 第50章 スキルの鮮度を保つ
 第51章 ゼネラリストかスペシャリストか
 第52章 講演とカンファレンス
 第53章 ブログの作り方
 第54章 フリーランスと起業
 第55章 キャリアパス
 第56章 職の安定と保障
 第57章 講習と認定資格
 第58章 サイドプロジェクト
 第59章 読んでおきたい良書
 第60章 最後に

 

紹介と感想

 アメリカで、なんだかそれなりに成功を収めているらしい筆者による、エンジニアとして生きていくためのキャリアパスの指針となるべく書かれた本、らしい。

 かなりざっくばらんに、口語的に書かれた本で、技術書というよりもエッセイ・ビジネス書的な雰囲気もある。紙面ではなんと650ページを超える大作。

 米国のエンジニア事情を多分に含んでいて、日本の事情とはまた異なるなぁと思う点も多々あるが、意外にも似通っているところも多く、なかなか楽しく&興味深く読むことができた。

 対象読者は、これからエンジニアという職を進もうとする人、またはエンジニアという職を現在手にしていて、その中でキャリアパスに悩んでいる人。エンジニアとして働く上でのマインドセットみたいなものも手に入れられる本なので、割と誰が読んでも得られるものがあるかもしれない。

 一方で、全くエンジニア職に関する知見がないひとにとっては、ついていけない内容なのではないかと思う部分もある。多分、全くの未経験文系おじさんが、IT系に転職するぞ!って言ってこの本読んだら、挫折すると思う。いや、そんなおじさんはこの本読まないかもしれないけどw

 

 著者の前著、SOFT SKILLSも人気。自分は読んだことないので内容は知らない。

 

 原著タイトルは"The Complete Software Developer's Career Guide: How to Learn Your Next Programming Language, Ace Your Programming Interview, and Land The Coding Job Of Your Dreams"と長いタイトルがついている。米アマゾンでは圧倒的好評を博していて、米国のエンジニア事情を表現した一冊としては、相当なクオリティなんだろうというのがうかがえる。
 もしあなたが、アメリカでやっていきたいんだという思いがあるなら、目を通しておいて絶対損しないだろう。

(原著URL)
https://a.co/d/2mqEmwU

 

 目次を見ると分かる通り、書いてある内容はかなり多岐にわたるので、必要な部分だけを取捨選択して読むことが推奨される。既にエンジニアとしてバリバリ働いている人にとっては、第一部第二部なんてまるっと読まなくてもいいと感じるかもしれない、その逆もしかりだ。
 エンジニアとして働く中で、節目となるタイミングで本書に戻り、必要な箇所だけもう一度読んで見るというのも良い考え方かもしれない。

 とにかく、ITエンジニアという職に対して、極めて現実的な視点で向き合わせてくれる書籍だ。進むべき道に迷ったときにはオススメしたい一冊だった。

 

極めて誠実な翻訳・編集

 洋書の翻訳版というのは、ときに、その口調や翻訳の精度から度々批判にあうことがある。本書を読む限りでは、まず、その内容としては十分なレベルでの翻訳であるように感じた。

 また、ただ翻訳が的確なのではなく、訳注/編注の適切さに称賛をしたいと感じた。特に顕著であったのは第44章 差別、偏見への対処法についての訳注。翻訳サイドが、「著者の言論に賛同しているわけではない」という前提で、内容についての指摘を淡々と行っている。この章の訳注だけで、4ページにも登っている。

 指摘している内容にも納得感がある(個人的には、著者の言論も、現実主義者の言葉という感じで納得できるが)。是非、こちらまで含めて、読んでみてもらいたい。

 

知見

・第二部を読む限り、エンジニアとしての働き方というのは、日本でも米国でもそう変わらないようだ。ただし、日本ではホワイトボードでのコーディングテストを実施することはかなり稀なので、そのあたりの面接事情はかなり異なるだろう。

・第三部の内容は、正直既に知っているなぁという内容が多い。ただ、本当に面接で説明できますか?と問われると悩んでしまうシーンがあるかもしれない。説明できるかという視点の重要さを感じる。

・第四部、IT分野の女性についての記述は、なるほどと思わされた。「パトロン面するな」という指摘に、ワ!とこころのなかのちいかわが飛び出る思いだった。いや、別にそこまでパトロン面(自分のほうが上だという気持ちをにじませながら過度に優しくすること)をしているかというとそうではないのだが、わずかながら思い当たるフシがあった。この章の結論にあたる「普通に行動しよう」はまさにその通りな言葉だ。

・第五部で言われる、社会的な評価を築けという指摘は身につまされる思いだ。まさに、今私がこういったブログなどでやろうとしているのは、そういうことだ。